今年のNAMMショウでフェンダーからFRANKENSTEINレプリカが発表されましたが、現在のエディスタイルのオリジナルとなったモデルといえばやはりこれ。
アーニーボールミュージックマンのE.V.H. = エディ・ヴァン・ヘイレン シグネイチャーモデルです。
発表された当時は、「これがエディモデル!?!?」と周囲に衝撃を与えたモデルですが、実に完成度の高いギターでエンドース契約の終わった現在でも若干の仕様変更を行い AXIS のモデル名で継続生産されているのはご存知の通り。
発売された時からかなり気になっていたギターですが、当時は何よりその価格(38万)を前にとても手が出ず、そうこうしているうちに音楽に対する興味も薄れて行っていた時期だったこともあり、憧れのギターは徐々に記憶の隅に追いやられていたのでした。
それからおよそ10年が経ち、iPodの購入をきっかけに音楽への興味が再燃。当時はCDすらあまり聴く事がなくなっていたのですが、持っているアルバムをiPodに取り込み通勤時間に聴きまくるようになったのです。メインは当然ヴァンヘイレン...そしてある日、会社の後輩から某VHトリビュートバンドのライブに誘われ・・・。
こうなるともう止まりません。しかし当時EVHは既に生産終了していて新品で購入することはできなかったのでAXISにするかAXIS-EXにするか、楽器屋を訪れ悩む日々がしばらく続きました。しかしそこでギター好きの友人からの一言が。
「本物にしとけば? どうせいずれは欲しくなるでしょ。」
このブルーフィニッシュが美しいギターは、3年ほど前に入手したものです。ボディトップのメイプルには全面にきれいなキルト杢目がムラなく出ており、トランスルーセントブルーの鮮やかなカラーリングとマッチして深い海を思わせる仕上がりになっています。ミュージックマンのトランスブルーフィニッシュは、個体によって青色の濃さにかなり幅があるように思いますが、このギターは濃すぎず淡すぎずといったところ。
Ernie Ball社にシリアルナンバーを照会したところ1995年に製造されたものとの回答でしたので、ほぼ最後期のモデルということになります。
初めて弾いた時、まずそのネックグリップに感動した。
Musicman EVHのネックは親指側にやや膨らみを持たせた非対称形状のシェイプを採用しています。これが実に手に馴染む。ネックの厚みは意外にある方だと思いますが、この非対称シェイプ&狭めの幅のバランスのおかげで握っていてボリューム感を感じることは全くなく、手が小さめの私でも実に自然にネックを握り込むことができます。80年代に一世を風靡したシャーベルも憧れのギターでしたが、実機を手にしてみたところワイド&薄めのシェイプがどうにも手に馴染まず購入を見送った身としては、このネックシェイプはもう目からウロコ以外の何物でもないのであります。
ミュージックマンの特徴でもある無塗装オイルフィニッシュとのコンビネーションでポジションの移動も気持ちよいくらいにスムーズ。これに慣れたらもう他のギターは弾けないな・・・と思ってしまった。
さらに演奏性を高めているのがこのボディとネックのヒールレスジョイント。
まあこれは今となっては珍しいものではなく、多くのメーカーでスタンダードになりつつありますが、このMusicman EVHも手抜きなくきっちりと仕上げられています。
ボディデザインは好き嫌い分かれるところだと思いますが、レスポールとテレキャスターを足して2で割ったような形状はコンパクトで取り回しも良く、クラシカルな雰囲気を持ちながらも他にはないオリジナルとしての存在感も持ち合わせている。音には直接関係のない部分ですが、トップのメイプルにフィギュアード材を使っているのもヴィンテージギターを彷彿とさせる雰囲気があり、楽器としての魅力を高めているポイントでしょう。
コンパクト・ヘッドストック
ヘッドストックはアーニーボール・ミュージッックマンの全てのモデルに共通の特徴的な4:2デザインを採用。
「飛行機の機内持ち込みサイズに収めるためにヘッドをぎりぎりまで小さくした。」などというウワサもあるようですが(?)、このコンパクトなヘッドデザインこそが機能面・音響面の両面からEVHのギター全体のバランスを向上させる上で非常に大きな要因になっているように感じます。
あくまで個人的な印象ですが、ヘッドを小さくしたせいで鳴りのポイントがネック本体に集約され、後述のとおりボディ材との一体感がより高められているように感じられます。
演奏性の面では、言葉でうまく説明するのが難しいのですが、ローポジションでネックを握った時のしっくり感がこのヘッドデザインならではの独特なものがあり、ネックを握っているだけで幸せな気分になってくるから不思議です。(笑) よくMusicmanのギターがショートスケールだと誤解されるのは、この部分に理由があるのではないかと思っています。
そんな数々の秘密(?)を持つこのヘッドストックのデザインに関しては、さすがのエディも「そのままでOK!」とGOサインを出したのではないでしょうか。
ギターが鳴っている。
サウンドについて。まずはいわゆる「生鳴り」、材が振動してギター全体が共鳴している感覚が今まで手にしたどのギターよりも優れています。
ユーズドで入手したものなのである程度弾かれていたということもあると思いますが、軽くて振動が伝わり易いバスウッドをボディ材に使用しているのが一番のポイントなのでしょう。メイプルネックと一体化してギター全体が鳴っているという感覚がビリビリと伝わってきます。
そんなギターなので当然のごとくサスティンも非常によく伸びます。他にロングサスティンが売りのスルーネック構造のギターも所有していますが、比べてもこのEVHの圧勝。おそるべしErnieBall Musicman。
バスウッドは以前は低価格帯のギターに使われていることが多かったので安物材的なイメージを持っていたのですが、このMusicman EVHを弾いてみてそのイメージは完璧に払拭されました。
80年代の初めくらいに、当時エディが入れ込んでいたアラン・ホールズワースが雑誌のインタビューで愛器のシャーベルのボディ材にバスウッドに使っていると語っている記事を読んだ記憶があります。
その頃のエディはKRAMERと契約をするかしないかくらいの時期で、まだアッシュボディのコンポストラト(FRANKENSTEIN)をメインに使っていたと思いますから、ホールズワースとの交流をきっかけに自分のギターにもバスウッドを使おうと思いついたのかもしれません。
バスウッドゆえの軽さも大きな魅力です。コンパクトなボディサイズと相まって、立っていても座っていても弾いていてストレスを感じることがありません。
※画像はEVH発売当時の国内版カタログ。価格表示以外は全て英語表記
EVH専用カスタムメイドP.U.
このモデル専用に開発されたDiMarzio製のピックアップは、エディが長年使い込んできたGibsonのオールドPAF(ダンカン説もあり)のサウンドを再現したもので、フロント・リアはそれぞれのポジションに合わせた専用設計になっています。
歪ませた時のサウンドは正にEVHの名に相応しいのもので、ボディの鳴りの良さと相まってハーモニクス豊かなファットなサウンドを響かせてくれます。個人的にはフロント+リアミックスでクリーントーンを鳴らした時の音もかなりお気に入り。ハードロックに限定されない幅広いサウンド作りが可能なのもこのギターの魅力ではないでしょうか。
Floyd Rose Licenced ダブルロッキング・トレモロ
フロイドローズのトレモロユニットはMUSICMANの刻印が入ったGOTOH製のものを搭載。何でも本モデルの製作にあたり、あらゆる種類のフロイドローズを集めてテストを行ったところ、エディの評価が最も高かったのがこの日本製のユニットだったらしい。
セッティングはノンフローティングになっておりアームダウンのみ可、アームアップはできません。ブリッジプレートはシムを使ってボディからやや浮いた位置でボディときっちり平行にセットされているので、激しいアームダウンでもブリッジがギターのボディに干渉したりすることもないですし、ミュート時に手を置いた時のフィーリングも極めて自然です。
D-Tunaは後付けのものですが、コレ便利ですね。一発でドロップDモードに切り替えることができ、思い立ったときにいつでもUnchainedのリフを弾くことができます(笑)
そしてレギュラーチューニングに戻すのも簡単。音程の微調整もかなり細かくできるようになっています。ただ、D-Tunaを付けると6弦のファインチューナーの調整幅が極端に狭くなるのが欠点。
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と、良いことばかり書いてきましたが、自分の理想をエディがそのままカタチにしてくれたようなギターなので、もうこれ以上のものを望むべくはない! というくらいのお気に入りなわけです。
気になる点をあえて挙げるとすれば、ボディが軽いせいか、ややヘッド落ち気味のバランスにあることくらいでしょうか。エディがMusicmanの後に使い始めたPeaveyのWolfgangは6弦側のホーンの部分がより突き出した形になったのは、このバランスを改善するためだったのかもと思ってます。(ヘッド落ちして困るとかのレベルではありません)
あとこれは個体差があると思いますが、「ミュージックマンのネックは温度や湿度の変化で動きやすい」という話を聞くことがありますが、確かにその傾向はあるように思います。私のギターは、チューニングに少し影響があるくらいでトラスロッドを動かすほどではないので特に問題になるレベルではありませんが。
以前はミュージシャンモデルというと名前の付加価値で売るためのもの、というイメージが強かったように思いますが、アーニーボールミュージックマンEVHは楽器としての完成度が非常に高く、デザイン的にも機能的にも新しいオリジナルのモデルとして評価されているのだと思います。国内外問わず多くのプロミュージシャンが愛用するのも納得です。
言うまでもなく全国的にEVHファン多し!という状況なんでしょうが、EVHホッシーノさんのサイトで多くのMusicman EVHを見ることができます。 EVHシグネイチャー友の会 (CLUB EVH)
最後に全編でErnieBall Musicman EVHのサウンドが堪能できるアルバムのご紹介。(ってあらためて紹介するまでもないと思いますけど...)
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