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2007年7月22日 (日)

外来魚=害魚論についての一考察

皇居のお濠の魚を電気ショックで... を書いたのには訳がある。

それは、ここ数年の外来魚を軸としたプロパガンダには目に余るものがあり、問題の本質を正しく捉えていないからである。

近年の環境悪化に対する取り組みと漁業経済へのダメージの責任を問われた行政当局が、自らの利益を優先させた環境開発工事などの活動を正当化し、非難の矛先を避けるために「外来魚が在来種を食う」という構図を誰の目にも分かり易い勧善懲悪の物語に仕立てて強調し、マスコミを通じて浸透させようとしているようにしか見えない。

当局がそのマスコミでの取り上げられ方を気にしていると思われる資料がある。

環境省 - 移入種関係記事数の年次推移
http://www.env.go.jp/council/13wild/y132-01/mat_02_5.pdf

これは一体なにを意図しているのだろうか?
理解に苦しむ資料である。

世間の目が外来魚に向いてくれれば良いと考えている証拠である。
それともマスコミが沢山取り上げているのだからそれは正しいこと、
これが在来種減少の根源なんですよ、とでも言いたいのか?

最近の外来魚(ブラックバス)規制の動きとして大きなものは以下の2つである。

●2002年10月
滋賀県はブラックバスなど外来魚の再放流(リリース)を禁止する県条例を可決し、2003年4月より施行した

 滋賀県 琵琶湖レジャー対策室(外来魚のリリース禁止)
 http://www.pref.shiga.jp/d/leisure/#rule3

●2005年1月
小池環境大臣の一言で、オオクチバスが特定外来魚被害防止法のリスト入りが決定し、6月に正式に法律として施行された
 http://www.env.go.jp/nature/intro/

この事については、詳しく書き出したら本が一冊書けるほどになってしまうのでここでは簡単なまとめに留めておこう。

在来種減少の原因については、外来魚の影響が全くないとは思わないが、根本的な原因ではあり得ないというのが私を含む外来種駆除規制反対派の意見である。

食害以前の問題として、河口堰や護岸工事によって遡上環境や産卵場所が失われ、さらに生活排水などによる水質悪化で魚の住む場所自体が奪われてしまっているという事実がある。

生まれ育つ環境がないのに食害も何もなかろう。
このままでは外来魚がいない環境であったとしても在来種が絶滅してしまうのは時間の問題に違いない。人為的な環境破壊のストップと、それらによって失われてしまった自然環境の回復のための取り組みをなくして回復は実現し得ないものと考えている。

また、外来魚の規制によって子供達が釣りを通じて自然や生命の尊さを学ぶ機会が奪われ、将来に犯罪に結びつくような人格形成の要因になってしまうのではないかという懸念も反対派が強く気にしている点である。(滋賀県の条例などは、事実上釣った魚はその場で殺すことを強制している)

参考になる記事があったのでここに紹介する。

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朝日新聞 2007年05月27日
アユ、多摩川にいらっしゃい
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鮎は産卵のために自分の生まれた河川を遡上する習性を持つ魚だが、その遡上の障害となっていた取水堰を解放し、遡上を促進して在来種である鮎の繁殖を促進させる取り組みが行われているという記事。さらに泳ぐ力が弱いテナガエビやモクズガニ、ハゼなども上れるようになるということも書かれている。

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朝日新聞  be on Sunday 2007年5月27日
マイワシ激減、兆しは19年前
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こちらは日本の近海でマイワシが激減しているという記事だが、その根本的な原因は、一般的に問題視されやすい乱獲によるものではなく、気候変動に伴う水温の上昇が大きな原因であることを示唆する内容になっている。

そして本日、日経新聞に掲載された記事。

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日本経済新聞 2007年7月22日
在来魚と外来魚がすみ分け・琵琶湖周辺  
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在来種と外来種では湖の中での産卵場所や成長してからの生息域が、それぞれの生態に応じた異なる場所になっており、結論付けまでは至っていないものの、環境さえ整えば共存の可能性があることが示唆されている。

記事全文をご覧になりたい方はこちらを。

 

外来魚規制のニュースを見ていると、今後日本の湖に生息している外来魚(特にブラックバス)はことごとく駆除されていく方向にあるように思えてくるが、実は大正14年にブラックバスが初めて放流された箱根の芦ノ湖をはじめ、河口湖や山中湖など、さほど規模の大きくない湖で在来種と外来種が共存している例はいくつもある。

それらの湖では、ブラックバスは魚種認定され、正式な資源として認められている。つまり地元に利益をもたらすものという理解が定着している地域では全く問題になっていないのである。これは、在来種減少の理由が外来魚以外にあるということの一つの証明ではないか。

数年前、茨城県 霞ヶ浦の地元漁師の間で「河口湖がバスフィッシングブームの盛り上がりで放流量を増やすためにブラックバスを高値で買い取っている。」という情報が広まると、それまでは網にかかると目の敵にされ、漁港の周りに捨てられ干涸びていたバスが一転して大切に扱われるようになり、漁師達はバスを狙って捕獲するようになり、結果的に霞ヶ浦ですっかりバスが釣れなくなってしまったという事もあったりした。(もちろん釣れなくなった理由は漁師による捕獲が全てではないと考えている)

また、日光 中禅寺湖でスモールマウスバスの繁殖が確認された時、地元漁協は釣り客誘致の目玉ともなっているブラントラウトの繁殖に影響が出るという理由で駆除を開始したが、ブラウントラウトは元々日本にはいなかった外来種である。獰猛なフィッシュイーターであるブラウントラウトが移入された当時、元々中禅寺湖にいた在来魚が相当影響を受けたであろうことは間違いないと思われる。(もちろんスモールマウスの放流を支持するつもりはない)

深刻に語られる一方でこのような状況があり、在来種の保護に関わる外来魚の是非なんて、じつはその程度のものだったりするのである。また、マイワシの記事にもあるように気候変化による影響だって問題のファクターとして考えられて然るべきことである。

根本的な対策をおざなりにしたまま外来魚の駆除だけで本当に在来種の再繁殖、ひいては自然環境の復元が図れると本気で考えているのなら、当局の問題解決能力は本当にお粗末なレベルであるとしか言いようがないだろう。

話は本題から外れるが、バス害魚論がここまで大きな問題となってしまったことの背景には、釣り人のマナーの悪さがある。早朝からの騒音、私有地へのクルマの乗り入れ、ゴミ捨て、漁業設備の破損などなど、実はこれが一番やっかいだ。自分が釣行する際にはこの点については十二分に注意して行動してするようにしているが、そのような事実があることは認識しているし、釣り人の一人として恥ずべきことであると思っている。

最近は諫早湾の問題が大きくニュースになることもなくなり、人々の記憶の隅に追いやられつつある。年金問題をはじめ、あまりに問題の多い日本の行政。
外来魚を隠れミノに環境破壊の問題をうやむやにしようとするのではなく、そろそろ「これまでの開発工事優先の政策は誤りでした。」と認めることも必要なんじゃないだろうか。



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